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故郷で、もう一度はじめる:アメリカ仕込みのキャリアを手に、日本へ渡る起業家たち

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故郷で、もう一度はじめる:アメリカ仕込みのキャリアを手に、日本へ渡る起業家たち

Photo: Japanese entrepreneur working laptop Tokyo coworking space modern office, via assets-global.website-files.com

サンフランシスコのベイエリアで6年間テックスタートアップに勤めたYukoさん(34歳)は、2023年の春に東京へ引っ越した。荷物をまとめた理由は、転職でも家族の事情でもない。「自分のビジネスを日本で立ち上げたかった」から、ただそれだけだ。

「アメリカで学んだことを、日本という市場で試してみたかった。それだけのことなんですけど、周りの反応はすごく大きかった」とYukoさんは笑う。

「逆移住」という選択肢が現実になった理由

日本からアメリカへ渡るのが「移住」なら、その逆は何と呼べばいいだろう。里帰り? 逆移住? 言葉はまだ定まっていないけれど、この動きは確実に広がっている。

背景にあるのは、いくつかの構造的な変化だ。

まず、リモートワークの定着。パンデミック以降、「どこにいても仕事ができる」環境が多くの職種で当たり前になった。アメリカ企業に籍を置きながら日本から働くことが、以前より現実的な選択肢になっている。

次に、日本政府が2023年に導入した「デジタルノマドビザ」の存在。年収要件などの条件はあるものの、アメリカ在住者が日本で合法的に働きながら生活できる道が、制度的にひらかれた。

そしてもうひとつ——円安だ。ドルを稼ぎながら円建てで生活するという経済的なメリットは、特に若い世代にとって無視できない現実として機能している。

アメリカで積んだ「武器」を日本で使う

こうした逆移住組が共通して持っているのは、アメリカでのキャリアや人脈、そして「日本市場の外から見た視点」だ。

ロサンゼルスで広告代理店に勤めた後、京都で英語教育スタートアップを立ち上げたTaroさん(38歳)はこう語る。「日本の教育業界は、まだアメリカのEdTech(教育テクノロジー)の影響をそこまで受けていない。自分がアメリカで見てきたものを持ち込む余地がある、と感じた」

Taroさんが活かしているのは技術だけじゃない。シリコンバレー仕込みのピッチ文化——投資家に対してビジョンを短く、力強く語るスキル——が、日本のスタートアップエコシステムで新鮮に映るケースも多いという。

また、英語が話せること自体が、日本でのビジネスにおいて大きなアドバンテージになる場面も多い。海外向けのマーケティング、外国人観光客向けのサービス、グローバル企業との交渉——こうした場面で「アメリカ育ちの日系人」というバックグラウンドは、唯一無二の強みになる。

コミュニティが生む、新しいネットワーク

逆移住した起業家たちは、日本各地でゆるやかなコミュニティを形成しはじめている。

東京や大阪だけでなく、福岡や那覇、松本といった地方都市にも「海外帰りの起業家」が集まるコワーキングスペースやイベントが増えている。こうした場では、英語と日本語が入り混じりながら、ビジネスの話と文化の話が同時進行する。

シアトルとの二拠点生活を続けながら、福岡でサステナブルファッションのブランドを運営するMisakoさん(31歳)は、こうした場が「どっちの文化にも完全には属せない自分」にとって居心地がいいと話す。「日本にいると、たまに『なんか違う』って感じることがある。でもアメリカでも同じように感じる瞬間がある。その『どちらでもある自分』を活かせる場所が、最近やっと見つかってきた気がします」

「巡る」ことで生まれるもの

アメリカから日本、日本からアメリカ——人が、経験が、アイデアが行き来することで、何かが生まれる。巡り、という言葉が示すように、一方通行じゃない流れのなかにこそ、新しい可能性がある。

逆移住した起業家たちは、ただ「日本に帰った人」ではない。彼らはアメリカと日本、両方の文化と市場を知っている。その複眼的な視点が、これからの日米ビジネスの新しいかたちを作っていく原動力になるかもしれない。

Yukoさんは今、東京でウェルネス分野のスタートアップを軌道に乗せつつある。「日本で起業するのは大変なこともいっぱいある。でも、アメリカで学んだことが確実に役に立っている。両方知ってるって、思った以上に強いんだなって実感してます」

アメリカで育てたキャリアを、日本という土壌に植え直す——その実験はまだはじまったばかりだ。

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