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「推し」はボーダーレス:アメリカで花開く、日本発ファンダムの新しいかたち

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「推し」はボーダーレス:アメリカで花開く、日本発ファンダムの新しいかたち

Photo: Unknown authorUnknown author, Public domain, via Wikimedia Commons

ロサンゼルスのアニメコンベンションを歩いていると、ある光景が目に飛び込んでくる。手作りのアクリルスタンドを胸ポケットに入れ、「推しのバースデー缶バッジ」をリュックにずらりと並べた若者たち。英語を話しているのに、そのスタイルはどこか日本のライブ会場で見たことがあるような気がする。

そう、「推し活」はいま、太平洋を越えてアメリカに根を張りはじめている。

「推し活」ってそもそも何?

日本ではすでにすっかり定着したこの言葉、改めて説明すると「自分が特別に応援しているアイドルやキャラクターを全力でサポートする活動全般」のこと。グッズを集めたり、ライブに通ったり、SNSで布教したり——その形は人それぞれだけど、根底にあるのは「応援すること自体が喜び」という感覚だ。

アメリカにもずっとファンダム文化はあった。スポーツチームへの熱狂、映画スターへの憧れ、バンドへの熱狂的な支持。でも「推し活」はそれとは少し違う。日本式の推し活には、「自分がその人やキャラクターを支えている」という能動的なニュアンスと、個人の深い感情移入が混在している。

K-POPファンダムとの意外な違い

アメリカで「アジア発のファンダム」といえば、まず思い浮かぶのはK-POPだろう。BTSやBLACKPINKが世界的な現象になり、アメリカのティーンエイジャーたちが韓国語を学び、ストリーミング数を増やすために組織的に動く姿は広く知られている。

でも日本式の推し活とK-POPファンダムは、似ているようでかなり違う。K-POPファンダムは集団行動の力が強く、チャートを動かすための「ミッション」的な側面が目立つ。一方、推し活はもっと個人的で、「自分と推しの関係性」を大切にするカルチャーだ。

ニューヨーク在住のファンアート作家・Emilyさん(24歳)はこう話す。「K-POPのファン活動はどこかチームスポーツみたい。でも私が日本のアニメキャラクターに対してやっていることは、もっと一対一の関係に近い感じ。誰かと競うんじゃなくて、自分のペースで愛でる、みたいな」

SNSが変えた「見せ方」の文化

推し活のアメリカ式進化を語るうえで欠かせないのが、SNSの存在だ。TikTokやInstagramを通じて、「推し活ルーティン」を公開するコンテンツが急増している。

日本では、推し活はどちらかといえば「仲間内で共有するもの」というニュアンスが強かった。でもアメリカでは、それが「見せるコンテンツ」として外向きに発信されるスタイルが主流になりつつある。推しグッズを美しくディスプレイした「推し棚」の写真、バースデーを祝うために作った手作りケーキ、コンサートやイベントに向けた「推し活コーデ」の紹介——こうした投稿が英語圏のSNSでじわじわ拡散している。

さらに面白いのは、言語の壁を超えた「翻訳推し活」とでも呼ぶべき現象だ。日本語の歌詞を自分で英訳してノートに書き留めたり、声優のラジオを字幕なしで理解しようと独学で日本語を学んだり。推し活がそのまま日本語学習のモチベーションになっているケースも少なくない。

アメリカ流にアレンジされた推し活スタイル

もちろん、すべてが「日本式のコピー」というわけではない。アメリカのファンたちは、日本の推し活文化を自分たちの文化や価値観でリミックスしている。

その一例が「推しと社会的意義を結びつける」動き。自分の推しの誕生日に合わせて、そのキャラクターやアーティストが関連するテーマの慈善団体に寄付する「バーサリー・ドネーション(誕生日寄付)」がアメリカのファンコミュニティで広まっている。日本の推し活には少ないこういった社会的なつながりは、アメリカのファンダム文化との融合から生まれたユニークな形だ。

また、DIY精神が旺盛なアメリカのファンは、日本では既製品を購入することが多いグッズを自分で作ることにこだわる傾向がある。エチー(Etsy)などのプラットフォームでは、日本のアニメやアイドルをテーマにしたハンドメイドグッズが大量に売られており、それ自体がひとつの小さな経済圏を形成している。

世代と文化が交差する場所

巡り(めぐり)——物事がぐるりと回って戻ってくる、そんな感覚がこの現象にはある。日本のポップカルチャーがアメリカに渡り、アメリカ人の手によって新しいかたちになり、そしてそれがまたSNSを通じて日本のファンにも影響を与えはじめている。

日系アメリカ人の視点から見れば、これは単なるエンタメの話じゃない。自分のルーツにある文化が、異なる文脈で生き続けているのを目撃する体験でもある。

シアトルに住む日系三世のKenjiさん(19歳)は言う。「祖父母が日本から持ってきたものが、こんなふうに自分の友達の間で流行っているのを見ると、なんか不思議な気持ちになる。でも嬉しい」

推し活はもはや「日本のもの」でも「アメリカのもの」でもなく、ふたつの文化が出会う場所で生まれた、まったく新しい何かになりつつある。その進化は、まだまだ続きそうだ。

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